the ruins of a castle チカチカとそれが点滅しだしたのに気付いたのはロディの方。ホムンクルスならではの視力の良さを、疎ましく感じていたのは過去の事。仲間の危機をいち早く感じる事が出来るそれを、今は誇らしくさえ思う。 「どうしたのですか?ロディ。」 祠の周りには魔物の群。近距離攻撃は、お互いに不利な二人は遠目からそれを眺めている。 「あの『祠』が変なんだ。さっきから、魔物は運ばれて来ないし、ザックの触ったアレが、点滅を繰り返してる。」 「私にはよく見えませんが、ロディの言葉を信じます。でも、何か起こっているということなんでしょうか?」 「そこまでは俺にも、起こっているのか、起こる前兆なのか…。」 そこで、言葉を止めて、ロディはセシリアを見つめる。 「側に行ってみよう。」 一瞬セシリアは息を飲んだ。あの無数にいる魔物の中に飛び込む事はある意味非常に無謀な事だ。けれど。 「わかりました。参りましょう。」 セシリアの返事を受けてロディは頷き、そして彼女を抱き上げた。これぞ正しく姫抱き。 セシリアはロディの腕の中で慌てて顔を上げ、頬を染めた。彼の呼吸が聞こえる程近くに、ロディのそれがある。 「あ、あの、私が広域の術で突破口を開いて、走った方がよろしいのでは…?」 「これから何が起こるかわからないんだ。俺の弾もセシリアの魔力も温存して置くに越したことはない。しっかり、捕まってて。」 ぐっと自分の膝と腰に廻された腕に力が籠もる。セシリアは何処にどう捕まればいいかと両手をロディの服の上で彷徨わせる。 「首に捕まって、俺の胸元に顔を埋めててくれ。」 「は、はい。」 両手を首の後ろで交差させ、ぎゅっと顔を押しつけた。ロディの心臓の音がやけに耳に付く。 「これでよろしいでしょうか?」 「う…うん。セシリアって意外と…。」 「はい?」 聞き咎めたセシリアに、ロディは何でもないと首を横に振った。額に巻かれた布が、ひらりと風に舞う。 「行くよ。」 呼吸を整えて、ロディはその身を魔物の群の中へ踊らせた。 何匹かの魔物を手中を潜り抜けた時だったろうか、今まで点滅を続けていた光が、周りを飲み込む様に一気に膨れた。 それは、なんの前兆もなく周辺に広がっていく。 「な…ん!?」 足を止める間も、ましてや後方に跳びすさる間すらなく、ロディとセシリアも光に包まれた。僅かな時間で広がった光は、あっと言う間に収縮した。包まれたものは無差別で、先程吐き出した魔物達も同じように包まれ、そして消えた。 目の前が真っ白になり、思わず瞼を閉じる。 それでも、再び目を開けるまでは、コンマで数秒しか掛かっていないはずだった。 けれどロディが感じるのは、両腕に掛かるセシリアの重みのみ。周囲の様子は一変している。 仄暗く、カビ臭い場所。岩を削りだした洞窟のようにも見えるが、判断は付かなかった。 「…あの…?」 腕の中で、セシリアが左右を見回すと目を見開く。答えを問うようにロディの顔を見つめた。 ふるっと首を振り、ロディは彼女を降ろしてやる。そうして足元を眺めると、模様の付いたタイルが敷き詰めてあるようにも見えた。何かの建物の中だろうか? 「何処…なんでしょうか?」 「わからない…けど。殺気は感じないな。」 「あれが祠だったのでしたら、私達は転移されたという事ですね?」 周囲に目を配りながら頷く。 〜To Be Continued
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